その歴史を知れば、無線ランとかルーターとかいうよくわからない単語も、なぜそう呼ぶのかまで納得できるようになります。
●このページでわかる単語一覧
インターネット、イントラネット
ラン(LAN)、ワン(WAN)
無線ラン(LAN)、ワイファイ(Wi-Fi)
ラン(LAN)ケーブル
アーパネット(ARPANET)、パケット
パケット交換、回線交換
プロトコル、ルーター
IPアドレス、ドメイン
無線ランルーター、ワイファイルーター
ポケットワイファイルーター、モバイルワイファイルーター
www、http、URL、リンク、ハイパーリンク
プロバイダー(ISP)
光回線、ADSL、ケーブルテレビ
ダイヤルアップ、ワイマックス(WiMax)
■目次
・インターネットとは?
・インターネットはなぜ、どうやってできたのか?
・インターネットでつながる仕組み
・誰が管理しているのか?
・プロバイダーの役割は?
・まとめ
■インターネットとは?
インターネットの語源は「インターネットワーク(internetwork)」で、本来の意味は「複数のネットワークを相互接続したネットワーク」、要するにネットワークのネットワークという意味です。
上の図のように4つの拠点があったとします。
各拠点は会社や学校でもいいですし、個人の家でも構いません。
ここで例えば拠点Aをあなたの通う(通った)学校だとしましょう。
最近の学校にはたくさんのコンピュータがあり、それらは(意識したことはないかもしれませんが)学校のネットワークにつながれて相互に接続されており、学校という拠点内でのコンピュータネットワークを構成しています。
このような各拠点内のネットワークを「ラン(LAN:Local Area Network)」と呼びます。
名前の通り「ローカルなエリア(すなわち拠点)」内で構築された「ネットワーク」です。
そして、このLAN同士をさらに相互に接続したネットワークを「ワン(WAN:Wide Area Network)」と呼びます。
これも名前の通り「ワイドなエリア(広範囲)」の「ネットワーク」です。
上の図で言えば、拠点A, B, C, DのそれぞれのLANが相互に接続され、1つのWANを作っています。
そして、一般的にいうインターネットとは、とあるWANから始まり(後で出てきます)、そこにさらに次々とWANが相互接続されてできた全世界規模の超巨大WANのことをさしており、固有名詞です。
一方、もともとの意味でのインターネットはネットワークのネットワークという意味ですから一般名詞です。
一般名詞の例:会社、企業
固有名詞の例:トヨタ、NTT、JR
インターネットとは本来ネットワークのネットワークのことを指す一般名詞なのですが、その中で全世界規模にまで拡大した特定のWANを固有名詞としてのインターネットと呼んでいます。
例えばたくさんの支店をもつ企業が、その企業の支店同士だけを結んでネットワークのネットワークを作ったとしたら、それも一般名詞としての意味ではインターネットです。
特に企業のネットワークの場合はイントラネットと呼んだりします。
聞いたことがあるかもしれませんね。
その場合は各支店内のコンピュータで構成される各支店のネットワークがLANで、各支店のネットワーク同士をつないだ企業全体のネットワーク(WAN)がイントラネットというわけです。
ただ、この辺りは知っていても知らなくても使う分には全く困らないので、興味がない場合は「ふーん」で済ませて全く問題ないです。
●無線LANの意味が分かった!
ところで、ここまでの文章と図を理解するだけと「無線LAN」という分かっているようで実はよく分かっていない言葉の意味がわかります。
無線LANとはつまり、各拠点のネットワーク(LAN)が無線によって構築されている、ただそれだけです。
コンピュータをネットワークにつなぐのはケーブルを使ってもできますし(有線接続)、携帯電話のように電波でつなぐ(無線接続)こともできます。
有線を使わず、無線を使って構築したLANだから無線LANと呼ぶ。
「なーんだそれだけかい」と思っていただけたのではないでしょうか。
そして、その方式の1つがこれまたよく聞く「ワイファイ:Wi-Fi」です。
無線LANの方式と言われてもピンとこないかもしれませんが、携帯の電波の仕組みも3GとかLTEとか、最近だと5Gなど様々聞くと思います。
それと同じで無線LANを構築する方式も様々ありますが、その中で最も一般的で最も使われている方式がワイファイで、普通に生活しているなら「無線LANの仕組み=ワイファイ」で大丈夫です。
ついでにこれで「LANケーブル」もわかりましたね。
あなたの家にもおそらくあって、パソコンとルーターをつないでいるこんなケーブルです(ルーターの説明は後で出てくるので安心してください)。
コンピュータとネットワークを物理的なケーブルでつないでLANを構築するときには、当然ケーブルが必要です(当たり前すぎることを言っています)。
その時必要なのがLANケーブルで、LANを構築するためのケーブルだから「LANケーブル」。
ただそれだけです。
■インターネットはなぜ、どうやってできたのか?
ここから先の説明でインターネットという場合、固有名詞としてのインターネット、つまり私たちが日常用語として使っているであろう全世界規模に広がった特定のWANのことをさします。
インターネットが全世界規模で構築されたコンピュータネットワークのネットワークであることは分かった。
では、そもそもなぜそんなものができたのでしょうか。
この話は1960年代にさかのぼります。
今でこそコンピュータは私たちの身近にあり、価格も手ごろになっていますが、昔はそうではありませんでした。
●昔のコンピュータは金食い虫
当時のコンピュータは非常に巨大・複雑・高価・メンテナンスが大変という物であったため、大きな大学や国の研究部門しか持っていませんでした。
そして、今でこそコンピュータはインターネット(というWAN)につながっているのが普通ですが、当時は各拠点内のネットワーク(LAN)のみにつながっていて、外界とは隔離されていました。
芽が出始めたコンピュータ技術の発展を加速させるためには、これらの限られた資源をいかに効率よく使うかが重要になってきます。
そのためには、各大学や国の研究部門のLANに存在するコンピュータを別の場所にいる研究者・技術者が操作(遠隔操作)できることや、あるコンピュータの途中処理の結果を、ほかのコンピュータに転送して別の処理をすることなどが求められました。
そこで各拠点のコンピュータ(ネットワーク)同士をつなぐという試みがスタートします。
この取り組みが初めて行われたのがアーパネット(ARPANET)と呼ばれるアメリカにあったコンピュータネットワークです。
アーパネットという単語を知っている人はほとんどいないですが、ITに詳しい人との会話中にポロっと出すと「分かってるね」と思ってもらえるかもしれません。
各拠点のLAN同士を接続してその間でデータやメッセージをやり取りしたり、遠隔から操作を行うというのは当時としては非常に困難な試みでした。
アメリカの土地は広大で有名な大学も各地に散らばっていますから、拠点同士をつなぐネットワークケーブル回線を引くだけでも大変です。
さて、なんとか苦労して拠点同士をつなぐネットワークケーブルを引いて、その中のとあるコンピュータ同士でデータをやり取りする実験が始まりました。
すると困ったことに、あるコンピュータ同士がある回線を使って通信していると、ほかのコンピュータはその回線を使っての通信ができなくなります。
これは固定電話を考えてもらえるとわかります。
あなたが電話をかけた相手(Aさん)が別の人(Bさん)と話中だと「プーップーッ」という話中であることを示す音が鳴りますよね。
人間は2人と同時に話せないので、仮につながってもどうしようもないのですが、それはとりあえずおいておきましょう。
固定電話の場合、回線を占有する「回線交換」という方式で行っているため、Aさんの家の電話を2つ以上の家の電話につなぐことができません。
これを簡単な図にすると下の図のようになります。
私たちの家の固定電話は電話会社に物理的なケーブル回線でつながれおり、どこかに電話をかけると電話会社を通って相手先にかかります。
あなたがAさんに電話をかけたとき、AさんがすでにBさんと電話をしていると、電話会社とAさんの家の固定電話をつなぐ回線が「占有」されているので、あなたからの通話をAさんにつなぐことができません。
人は2人と同時に通話できませんから電話であればこれでもいいでしょう(といってもグループ通話ができる仕組みが今ではいくらでもありますが)。
ですが、コンピュータ同士の接続はそうはいきません。
コンピュータは同時並列に処理をすることができます。
また、「様々な場所からコンピュータを使いたい」というのが目標の1つなのに、ある人がある回線を使ってあるコンピュータに接続したら、別の人はその回線を使えないのでは意味がありません。
●画期的なアイディア「パケット交換」
そこで生まれたのが「パケット交換」というアイディアです。
携帯電話を契約するときに「パケット」という言葉が出てくると思いますが、これまた私たちがよくわかっていない言葉の1つだと思います。
実はパケットの起源はアーパネット(ARPANET)にあったんです。
パケット交換のアイディアを一言でいうと「送りたい情報をパケットという単位に分割して送る」というものです。
上の図を見てください。
今拠点Aから拠点Dに「データA」というものを送りたいとします。
このとき、従来の「回線交換」やり方だと拠点Aと拠点Dの間のネットワーク回線を一時的に「占有」して、データAの送信が完了するまでそのまま占有し続けることになります。
このやり方だと、拠点Aと拠点Dの間が別のデータ送受信のためにすでに占有されていたら、それが終わるまで待つ必要があります。
また、データAを送っている間はほかのデータを送ることはできません。
一方、「パケット交換」方式ではデータAをパケットという単位に分割し、送ろうと思ったときに空いている回線を使ってバラバラに送ります。
パケットにはそのパケットがデータAのどの部分なのかという情報もくっついているので、拠点Dでは受け取ったパケット1とパケット2から元のデータAを復元でき、無事データの送受信が完了したことになります。
こうして、その時空いている回線を使ってパケットの送受信を行うことで、ネットワークの利用効率がアップします。
めでたしめでたしですね。
また、上の図では拠点間を相互接続するメリットである耐障害性についても書いてあります。
拠点Aと拠点Bの間の通信ケーブルが障害などで遮断されても、他の拠点を経由すれば拠点Aから拠点Bにデータを送信することが可能になります。
余談ですが、アーパネット(ARPANET)にはアメリカ国防省も関わっていたので、「アーパネットは核攻撃にも耐えられる軍事ネットワークの研究をしている!」という声もあったそうです。
そういった面もあったかもしれませんが、コンピュータ技術の発展のために限られたコンピュータ・ネットワーク資源を有効に活用したいというのがあくまで最初のスタートです。
余談終わり。
さて、アーパネットは「カリフォルニア大学ロサンゼルス校」、「カリフォルニア大学サンタバーバラ校」、「ユタ大学」、「スタンフォード研究所」の4つの拠点のWANとして始まりました。
国のお金も使ったプロジェクトだったので、当初このネットワークに接続できるのは学術機関のみでしたが、どんどん他の学術機関が参加し、規模が拡大していきました。
そしてこのプロジェクトによってインターネットの技術が発展し、各国に広がったため、アメリカ以外の国でも大規模なWANができてきます。
それらもどんどんこのネットワークに参加してきたため、海・国をまたいで相互に接続された全世界規模のWANへと成長していきました。
こうなってくると管理の所在もあいまいになってきますから、学術機関だけでなく徐々に商用色の濃いWANも参加してきます。
そして紆余曲折あり、最終的に今のような学術・商用問わず、全世界規模で構築されたコンピュータネットワークとなったわけです。
■インターネットでつながる仕組み
このようにインターネットは全世界規模でコンピュータネットワーク同士をつないだネットワークですから、その中のコンピュータ同士がやり取りするためには統一したルールが必要です。
このルールのことを「プロトコル(protocol)」と呼びます。
プロトコルは「儀礼」とか「協定」とかいう意味を持つお堅い単語なので、コンピュータ同士がやり取りするための手順を表す言葉としてはピッタリです。
●言語が違うとコミュニケーションが取れない
プロトコルは言語のようなものだと思ってください。
お互いに使う言語が違うと話は通じませんよね。
これと同じく、コンピュータ同士がやり取りするためには共通の言語、ルールであるプロトコルをお互いが守ることが必要です。
メールを送るにしても「メールとはどういう構成でどういう手順で送受信されるのか」というルールを送信側、受信側でお互いが共通して持って守らないと、メールの送受信という基本的なことすらできません。
このように守らなければインターネットをまともに使えないルールであるプロトコルは、軽く列挙するだけでもIP, TCP, UDP, HTTP, SMTP, FTP, DNSなどがあります(レイヤーをごっちゃにしているので詳しい方が見ると突っ込みたくなるかもしれませんがご容赦ください)。
ですが、「ありすぎて大変」と思う必要はありません。
私たち一般の利用者はプロトコルの存在について意識することはありません。
プロトコルがたくさんあって、様々な事柄が細かく規定されているおかげで、インターネットが機能し、私たちはその恩恵を受けることができるわけです。
プロトコルに感謝ですね。
●インターネット界の主役キャラ登場
ここからいよいよ「ルーター」と「IPアドレス」というインターネット界の主役キャラが登場します。
この2つの概念が分かればあなたも立派なITが分かる人です。
上の図を見てください。
今までの図と少し変わっています。
今までの図ではすべての拠点が相互接続されていましたが、現実世界ではそうではありません。
あなたの家のコンピュータだって全世界のコンピュータネットワークと直接つながっているわけではなく、契約したプロバイダー(次に説明します)を介してインターネットに接続していますね。
現実世界では上の図よりもさらに複雑にLAN、WANが相互に接続しあって、結果的に全世界規模のWANであるインターネットができています。
そして拠点間のネットワークには絶えずデータ(メールとかWebサイトのデータなどがパケットに分割されたもの)が流れています。
これは現実世界と以下のように対応付けるとわかりやすいかもしれません。
拠点:家、学校、役所、会社
ネットワーク:道路、線路、空路、航路
パケット:人
例えばあなたが家から会社に行きたいとしましょう。
家と会社は直接一本道でつながっていませんから、家を出て会社の方向にまっすぐ進んでいけば着くというわけではありません。
ですが、様々な道路や電車を経由していくことで最終的に会社にたどり着くことができます。
そしてそのルートは近道、遠回り含めてそれこそ無限に考えられるでしょう。
例えば横浜市の家からセルリアンタワー(東京都渋谷区桜丘町26−1)にある会社のオフィスに行くのに、新幹線で大阪に行って、北海道に飛んでから、羽田に戻ってきて、電車で行くということもできます。
成田に行って、アメリカに飛んで、ロシアに飛んで、沖縄空港、鹿児島空港、博多と経由して新幹線で東京に行き、そこから山手線で渋谷に向かう。
こんなルートすらあります。
ですが、どんなルートを通っても1つだけ変わらないものがあります。
それはなんでしょう?
5秒くらい考えてみてください。
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●目的地の住所(アドレス)が非常に重要
それは「目的地(セルリアンタワー)の住所」です。
どんなルートを通っていこうが、最終的にたどり着く場所である目的地の住所は同じです。
当たり前ですね。
なぜこんな当たり前のことを説明したかというと、最終的に辿り着きたい場所を一意(ユニーク、重複なし)に定める「住所(アドレス:address)」というものが非常に大事だということを伝えたかったからです。
そしてもう一つ。
インターネット上でのデータも「様々な拠点を経由して宛先に届く」ということも人間の移動と同じです。
インターネットでは全世界のコンピュータとデータをやり取りします。
全世界のコンピュータ同士を直接相互につなげるのは当然不可能です。
なので様々なコンピュータ、ネットワーク、拠点を経由して宛先までデータを届けることになります。
そして、そのためには、データを送りたい先のコンピュータがどこにあるどのコンピュータなのか一意に定めるのが非常に重要です。
なので、インターネットという仕組みが成り立つためには、各コンピュータに住所(アドレス)が必要となってきます。
これがインターネットの主役の1つ目「IPアドレス」です。
IPアドレスは要するに各コンピュータのインターネットにおける住所です。
上の図で各拠点に「123」から始まる数字を割り当ててありますが、これがIPアドレスで、このようなIPアドレスをIPv4アドレスと呼びます。
実際には、IPアドレスは各拠点(LAN)ではなく各コンピュータに割り当てられているのですが、説明の都合上各拠点にIPアドレスが割り振られていることとします。
●超働き者「ルーター」の仕組み
*上の図が遠くなってきたので同じ図を再度表示しています。
さて、上の図で拠点Eから拠点AへデータAを送りたいとしましょう。
インターネットではデータAをパケットに分割して送るんでしたね。
すると「⇒ C ⇒ A」というルートと「⇒ D ⇒ C ⇒ A」という2つのルートが考えられます。
「え?どうせ拠点Cを通るなら拠点Dを経由するの無駄じゃないですか?」
するどいですね。
確かに経由する拠点だけ見るとその通りなのですが、現実の世界では拠点間のデータ通信の「ネットワークコスト」というものも重要になってきます。
例えば拠点Eと拠点Cの間のネットワークケーブルが貧弱で、ものすごーくトロトロとしかデータの送受信ができないことがあります。
その一方で拠点Eと拠点D、拠点Dと拠点Cの間のネットワークがすごく速かったりすると、経由する拠点が増えても拠点Dを経由する方が早い可能性があります。
ただ、ネットワークコストの話まで踏み込むと、難しく細かい話になりすぎてこのサイトのコンセプトから外れるので、ここでは「どちらのルートもあり得る」とだけ思ってください。
ですが、ここで少し困ったことが起こります。
私たちはいわば神の視点で見ているので拠点Eから拠点Aへのルートがわかります。
ですが、拠点Eから見えるのは直接つながっている拠点Cと拠点Dだけです。
拠点Eと拠点Aは直接接続されていないので、拠点Eからは拠点Aがどこにあるのかわかりません。
どうすればいいでしょうか?
ここで次の主役キャラ「ルーター(router)」が登場します。
「ルーター」は「router」というその名前の通り、インターネット上でデータの中継を行い、どのルートを通してデータを宛先に届けるかを決める、すなわち「ルーティング」をする機器です。
ルーターはルーティングテーブルという「ある宛先にデータを送りたいとき、どのIPアドレスにとりあえずパケットを送ればよいのか」というテーブルを持っています。
*またまた同じ図を表示しています。
例えば上の図では、各拠点のルーターが持つ「拠点Aに関するルーティングテーブル」だけを抜き出して表示してあります。
拠点Eからすると、拠点Aにデータを送りたい場合は拠点C、拠点Dどちらに送っても問題ありません。
そのため、拠点Aに関するルーティングテーブルには、拠点C、拠点D両方のIPアドレスが記載されています。
一方、拠点Bから拠点Aにデータを送りたい場合は、まずは拠点Dに送るしかありませんね?
なので、拠点Bの拠点Aに関するルーティングテーブルには拠点DのIPアドレスが記載されています。
ルーティングテーブルに複数のIPアドレスがある場合、つまり複数の送り先の選択肢がある場合、どのIPアドレスに送るかは、ネットワークコストや、ネットワークの空き状況などからその都度決定されます。
今回は、このルーティングテーブルを使って、拠点Eはとりあえず拠点Dに拠点A宛のパケットを送ったとしましょう。
そのパケットを受け取った拠点Dでは、パケットの送り主情報と宛先情報から「このパケットは拠点Eから来たもので、拠点Aに送ればいいんだな!」ということを読み取ります。
そして次に自分の持っている拠点Aに関するルーティングテーブルを見ると、拠点Cと拠点Eの2つのIPアドレスが記載されています。
拠点Eは自分にパケットを送ってきた拠点ですからそちらには送り返しません。
すると残る拠点Cにパケットを送ることになります。
そして拠点Cでは、同じく宛先情報から拠点Aに送ればいいことを読み取り、直接つながっている拠点Aにパケットを送信します。
これでゴールです。
かなり単純化して説明しましたが、実際にはこれ以外にも様々な処理が行われています。
例えば、ネットワークには雑音がつきものなので、途中でパケットがロスト(失われる)したり、情報の中身が変わってしまったりすることがしょっちゅうあり対処が必要です。
送り主である拠点Eからすれば、拠点Aに本当に正しくデータが届いたのかわからないと不安ですから「ちゃんと送れたよ」というやり取りも必要です。
そういった様々な処理が組み合わさって、ようやく「拠点Eから拠点Aにデータを送る」ということができます。
このようなコンピュータ同士のデータの送受信の仕組みも当然インターネット上で統一されている必要がありますから、プロトコルの1つです。
そして、インターネットではデータのやり取りが生命線です。
なので、このデータの送受信に関するプロトコルを
インターネット・プロトコル
IP:Internet Protocol
と呼びます。
まさにインターネットの根幹をなすプロトコルであるということです。
このプロトコルにおいて使われるアドレスであるからこそ「IPアドレス」と呼ぶわけですね。
そして何となく感じると思いますが、全世界のコンピュータのアドレスを一意に定めようとすると、ものすごい数のIPアドレスが必要になります。
案の定最初に使われていたIPv4(インターネットプロトコル・バージョン4)アドレスは約43億個しかなかったため、2011年~2015年にかけて枯渇してしまいました。
今は様々な仕組みを使って何とかやりくりしていますが、IPv6(インターネットプロトコル・バージョン6)というIPアドレスを3.4×1038個使用できるプロトコルへ徐々に移行されています。
そして、IPアドレスというのは人間にはわかりにくいので、人間が関わる世界では「ドメイン」という文字列に変換されます。
例えば「182.22.25.124」というIPアドレスを見ても覚えにくいしわかりにくいですが、これが「www.yahoo.co.jp」だったらどうでしょう。
一目見て「あっ。ヤフー(Yahoo!)のアドレスだ」とわかりますね。
このようにIPアドレスがドメインに紐づけられていると、わかりやすいこと以外にも良いことがあります。
それは、1つのドメインにたくさんのIPアドレスを対応させることで、負荷を分散できることです。
例えばヤフーのサイトは毎日たくさんの人が見に来るため、それだけたくさんの処理が必要です。
これを1つのコンピュータで行うのはとても無理があります。
ですが、「www.yahoo.co.jp」というアクセスがあった時に、ある時は「182.22.25.124」というIPアドレスのコンピュータ、別の時は「182.22.25.125」というIPアドレスのコンピュータに処理させる。
このように処理を分散させることで、巨大なサイトでも運営できるわけです。
どちらの場合でも訪問者からすると「www.yahoo.co.jp」にアクセスしているということは変わらないので、非常に便利な仕組みです。
どうでしょう。
ルーター、IPアドレス、ドメイン・・・。
これまで何となく使っていた用語の意味が相当深くわかってきたと思います。
ここまで分かればもうあなたは立派なITマスターです。
「無線LANルーター」もわかりましたね。
無線で構築されたLAN内で、どのコンピュータ(IPアドレス)にデータを送るかというルーティングをしているから「無線LANルーター」です。
あなたの家のコンピュータネットワークも上の図で言うところの拠点(LAN)であり、立派にインターネットの一部です。
「え?コンピュータネットワークと言われても、私の家では無線LANルーターを使ってパソコン1台をインターネットにつないでいるだけですよ?」と思うかもしれません。
ですが、ルーターがあり、そこにコンピュータをつなげていれば、それであなたの家は立派に1つのLAN拠点です。
もちろん無線でなく、有線でルーターにつないでいても同じくLANです。
そのコンピュータネットワーク(LAN)を無線で構築し、その中でルーティングをしているのがあなたの家にある無線LANルーターです。
「ワイファイ(Wi-Fi)ルーター」も聞いたことがあると思います。
これは、無線LANの方式としてワイファイを使っている(このページの最初の方に出てきましたよ)無線LANルーターのことをワイファイルーターと呼んでいるにすぎませんから、ほとんど同じものと考えて大丈夫です。
では、しつこいですが「ポケットワイファイルーター」は?
ただ単に持ち運べる(ポケットに入る)ワイファイルーターということです。
モバイルワイファイルーターも同じです。
また他にも、ルーターの説明で「最大10台までつなげます」みたいなのがありますが、簡単に言えば「10台まではルーティングできますよ(ルーティングテーブルを管理できますよ)」ということです。
どうでしょう。
様々なことが分かってきますね。
ルーターはIPにおいてルーティングという肝の部分を担っていますから、その仕事量は膨大です。
新しいコンピュータが増える、ネットワークの構成が変わるということは世界規模で見れば毎秒起こっており、そのたびにルーティング経路が変わります。
なので、国同士の接続ポイントなど、インターネットのコアの部分にあるルーターは特に「コアルーター」と呼ばれ非常に高性能です。
そしてルーティングテーブルを現実的にどうやって維持・更新していくかなどは非常に面白い話なので、興味がある方は「ルーティングプロトコル」で調べてみてください。
・・おっと。ここでもプロトコルという言葉が出てきましたね。
どうやってルーティングテーブルを維持・更新していくかも、全世界のルーターで同じルールが必要です。
だからプロトコルとしてきちんと整備されています。
「ルーティングプロトコル」という単語を見た瞬間に「なるほど。ルーティングのための決まり・ルールなのね!」とわかるようになってきましたか?
■誰が管理しているのか?
ここまで分かってくるとこんな疑問がわいてくるのではないでしょうか?
「全世界でユニークなIPアドレスとか、いろいろなプロトコルとか、いったい誰が決めて誰が管理してるの?」
実はインターネットには管理の責任者・主体は存在しません。
インターネットはあくまでたくさんのLANやWANの集合体ですから、それぞれのLANやWANはそれらの管理者が管理しています。
とはいっても、全世界で共通のルールが必要なわけですから、インターネットが発達する歴史の中で様々な非営利団体が生まれました。
■IPアドレスの維持:ICANN
まず、インターネットにおける住所であるIPアドレスやドメインを管理しているのはアイキャン(ICANN:Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)という団体です。
ただ、ICANNで全てを管理しているわけではなく、世界を5つの地域に分けてそれぞれの地域の団体に管理を委託しています。
日本に関係するところでいうと、まず、アジア・太平洋地域を「APNIC:Asia-Pacific Network Information Centre」が管理しています。
次に一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC:Japan Network Information Center)が日本国内の面倒を見ています。
お堅い名前ですね・・・。
そして、実際のIPアドレスの割り当てやドメインの取得などはレジストラと呼ばれる営利目的の企業が行っています。
私たちが接する機会があるのはこのレジストラです。
このサイトで独自ドメインやレンタルサーバーを取得する先として紹介しているValueDomainもレジストラの1つです。
■通信プロトコル関係の管理:IETF
次にIPなどインターネットがまともに動くための様々な仕組みについて議論し維持管理(標準化)を行っている組織が、「インターネット技術タスクフォース(IETF:The Internet Engineering Task Force)」です。
何やら大層な名前ですが、実はこの議論には誰でも参加できます。
もちろんあなたもです。
インターネットは管理主体が存在しませんから、皆がバラバラのルール(プロトコル)を使う自体も起こりえます。
ですが、それではインターネットによる便利な世界ができませんから、この枠組みの中で議論し「標準化」された技術として「皆でこの技術を使いましょう」ということを決めるわけです。
そして、例えば「インターネットの根幹であるインターネットプロトコル(IP)はこういう仕組み」ということが議論されて、採用(標準化)されることによって、その仕組みが全世界で使われます。
つまりインターネットの世界は「皆が使っているから皆が使う」ことによってルールが統一されている世界なのです。
お金と似ていますね。
現代のお金は不換紙幣でありタダの紙(どころか最近はもはやバーチャルな数字)ですが、みんながその数字を貨幣として使っているから私もあなたも使っているわけです。
お金であればそれを管理してるのが各国政府であり、インターネットであればIETFということです。
■Web関係の管理:W3C
せっかくなので私たちがインターネットを使う主な用途である「ワールド・ワイド・ウェブ(www:World Wide Web)」についても解説しておきます。
ちょっと理屈が多くなります。
Webサイトのアドレスは「http://www.aaa.com/」という形式になっていることが多いです(「www」がついていないケースもありますが)。
このうち「http」は「ハイパーテキスト・トランスファー・プロトコル(http:Hypertext Transfer Protocol)」です。
またプロトコルが出てきましたが、要するにWebサイトのデータを送受信するときのプロトコルで、その仕組みを使って通信しますよということです。
Webサイトは主に「ハイパーテキスト・マークアップ・ランゲージ(HTML:HyperText Markup Language)」によって書かれており、それをやり取りする仕組みだからhttpというわけです。
ここでのキーワードは「ハイパーテキスト」です。
ハイパーテキストとは、ただのテキスト(文書)ではなくハイパーなテキストということで、最も画期的な点は、とあるハイパーテキストから別のハイパーテキストに飛べることです。
そのためには、飛ぶ先のハイパーテキストの場所を示す必要があり、それをクリックすることでそのハイパーテキストへ飛べる必要があります。
少しややこしいですが、ハイパーテキストの場所を「ユニフォーム・リソース・ロケータ(URL:Uniform Resource Locator)」、ハイパーテキスト上で表示されているURLを「リンク(正式にはハイパーリンク)」と呼びます。
「場所を示す」と聞くと、IPアドレスと似ていますね。
ただ、URLとIPアドレスは少し違います。
例えばあなたが今ご覧のこのページのURLは以下のようになっています。
http://www.homepagesakusei.biz/s1_makemedia_gettool/itword/internet_provider/
これは「http」という手段を使って「homepagesakusei.biz」というドメイン(IPアドレスの別名、つまり住所でしたね)のコンピュータの中の「/s1_makemedia_gettool/itword/internet_provider/」にあるもの(今回であればhttpなのでハイパーテキスト)を取得せよという意味です。
これすべてでURLで、「WebサイトのURL」という言葉はこれのことを言っています。
逆に言うと「Webサイトのアドレス」というのは厳密には適切ではありません。
インターネットの世界でアドレスといえばIPアドレスであり、インターネット上での住所ですが、上の説明でわかるようにIPアドレスの別名であるドメインはURLの一部にすぎません。
うーん・・。まあ、ややこしい話はこれくらいにしておきましょう。
実際問題、ここまで深く考えている人はいないですし、私もこのサイトの中でURLのことをアドレスと呼んでいることはしょっちゅうあると思います。
なのであまり気にしなくて大丈夫です。
Webサイトとはハイパーテキストの集まりで、その場所であるURLによって指定することで特定のハイパーテキストを閲覧できるわけです。
そして「リンクをクリックする」とはつまり、とび先のハイパーテキストの場所であるURLをクリックすることでそのとび先のハイパーテキストに移動しています。
例えばこのサイトでもリンクをクリックすると別のページや別のサイトのページに飛びます。
このように、とあるWebサイトでリンクをクリックすると別のページに飛んで、そのページでリンクをクリックするとさらにまた別のページに飛んでと、Webの世界はまるで無限の蜘蛛の巣のように広がっています。
このようなWebの世界を世界規模で広がった(World Wide)蜘蛛の巣(Web)に例えて「World Wide Web」と呼ぶようになりました。
大多数のWebサイトのURLに「www」というのがついているのは、そういう背景があります。
そして、この「World Wide Web」で使われる技術を管理しているのが「ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C:World Wide Web Consortium)」です。
「World Wide Web」は利用者から見たときのインターネットの主役なので、その管理は上で紹介した「IETF」からこの「W3C」に移って、より専門的に管理されるようになっているわけです。
このようにインターネットという枠組みは管理主体がいないながらも、様々な非営利団体によって維持管理されているからこそ、私たちはインターネットという便利な道具を使うことができています。
■あなたはトップ5%
ここまでであなたはインターネットに関して相当詳しくなりました。
それも単に知識を知っているだけではなく、それぞれの技術の関係や背景なども理解できたわけですから、おそらく世間のトップ5%に入っています。
これからは自信を持ってください。
それではここからは、このような仕組みでできているインターネットを、実際に私たちが使うときに出てくる「プロバイダー」の話に移りましょう。
■プロバイダーの役割は?
さて、あなたの家でインターネットが使える場合、インターネットを契約した会社(プロバイダー)から受け取った「ルーター(というこれまではよく分かっていなかった機器)」にパソコンをつないでいると思います。
では、ルーターの先はどうなっているのでしょうか?
光回線やADSLで契約している場合、マンションで最初から回線がある場合を除き、契約する際に回線(ケーブル)を引くための工事をしたと思います。
場合によっては工事の人に「ケーブルを通すため」と言われて壁に穴を開けた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この時引いた回線の一端がルーターにつながっており、その回線のもう一端の先がプロバイダ(ISP:Internet Service Provider)のネットワークです。
プロバイダとはISPの名の通り、「インターネットに接続するためのサービス」を提供する組織(多くは営利企業)であり、NTT、ニフティ、ビッグローブ、OCN、GMOなど聞いたことがある企業も多いと思います。
■なぜプロバイダを使うのか?
インターネットにおける様々なルールのことを「プロトコル(protocol)」と呼ぶのでしたね。
そのような様々なルールがあるインターネットに対して、プロバイダーというものが存在せず、私たちが個人でインターネットに接続しようとすると何が起こるでしょう。
様々なプロトコルを調べ、それぞれに応じられるようにサーバーというものを構築し、さらに自分で回線を引いてどこかのネットワークにつなぎに行かなければなりません。
正直やっていられませんし、そもそも現実的ではありません。
なので、普通の人というか、よっぽどのコンピュータのプロでも、わざわざ個人でインターネットに接続しようとはせず、プロバイダーにお金を払って簡単にインターネットに接続します。
プロバイダーにお金を払うことで、そういった面倒なことはプロバイダーに任せて、私たちは「ルーター」を借りて、とりあえずそれにパソコンをつなげばインターネットに接続でき、その便利さを享受できるわけですね。
簡単にいうと、「プロバイダーにお金を払うと簡単にインターネットに接続できる」ということです。
私たちがこうしてインターネットに接続する際、プロバイダーネットワークにつなぐ方法は光回線やADSLのように物理的なケーブルを引く方法(有線接続)と、携帯電話のように電波(無線)でつながる方法の2種類があります。
■iモードの衝撃
一昔前のダイヤルアップ回線から始まり、少し前までは家庭でインターネットに接続する方法といえば有線接続しかありませんでした。
そこに登場したのがNTTドコモの「iモード」です。
「iモード」は実はISPの一種で、「携帯電話がインターネットにつながる」という当時としては革命的な仕組みを提供し、爆発的に広がりました。
今でもiモード(と後継のspモード)は無線方式のISPとして世界最大級の規模を誇っています。
iモードは携帯電話のみでしたが、そこから無線によってインターネットにつながるというのがスタートしました。
携帯電話会社を除く無線方式ISPの代表がインターネット接続に月4,000円以上払っているあなたは損してるで紹介している「WiMax」です。
まとめると、有線でつながる仕組みの種類が「光」や「ADSL」、「ダイヤルアップ」、「ケーブルテレビ」などであり、無線でつながる仕組みの種類が「携帯電話ネットワーク(3GやLTE、5G)」や「WiMax」などです。
「無線LANも無線でインターネットにつながってるんじゃないの?」と少し混乱するかもしれないので補足しておきます。
無線LANというのは「ある拠点(例えば私たちの家)内のコンピュータネットワーク(LAN)」が無線で構築されているということで、確かにパソコンから無線LANルーターまでは無線でつながっています。
一方、ここで言っている「携帯電話ネットワークやWiMaxでは無線でインターネットにつながる」とは、ルーターの先にあるプロバイダーネットワークとの接続が光回線やADSLのようにケーブルを用いた有線接続ではなく、電波を用いた無線接続であるということです。
■まとめ
さて、相当長くなりましたが、インターネットとは何かということから始まって、その成り立ち、仕組み、一部の技術の詳細、プロバイダーとの関りについて解説してきました。
少しまとめましょう。
インターネットは一般名詞の意味としてはネットワーク(LAN)のネットワーク(WAN)であり、その中で全世界に広がった特定のWANを固有名詞としてのインターネットと呼ぶ。
昔はコンピュータやネットワークが高価だったので、技術の発展のためにそれらを効率的に使うために、各拠点のコンピュータネットワーク同士をつなぐ試みが始まった。
それが全世界に広がっていき、その過程で共通のルールである様々なプロトコルができていった。
その中の主役はインターネットプロトコル(IP)で、それを支えているのはIPアドレスとルーター。
インターネットには管理主体はないが、IPアドレスや各プロトコルなどを管理する営利団体が存在する。
個人でこの便利な仕組みであるインターネットを利用するために、プロバイダーにお金を払って接続サービスを提供してもらっている。
ざっとこんな感じでしょうか。
途中でも書きましたが、このページに書いてあることの半分でも理解できれば、あなたはインターネットに関してはもう十分知識を得ている状態です。
友達、お子さん、家族にも説明できるよう、流れとそれぞれの関係に関して意識して説明してきましたので、理解を深める意味でも周りの人に教えてみてください。